年間第17主日 A年
わたしたちはいくら物質的に満たされても、経済的に豊かであっても、心身ともに健全でなければ、また心が精神的にも、心理的にも不安定で、真の安らぎがなければ本当に幸せに生きているとは言えません。
わたしたちは、自分の生活を幸せなものしようとして、お金やものを得るために一生懸命に働きます。それは生きるために確かに大切なことです。幸いにそれらのものを十分に獲得できたわたしたちは、この世の春を謳歌しているでしょう。しかし、それでわたしたちは本当に完全に心が満たされ、安らかな生活を営むことができるでしょうか。
人間の心は不思議なことに、そのようなお金やもので得られた幸福というものでは、とても満足できない構造になっています。どんなに豊かで恵まれた生活ができても、人間の心はそれで安らぐわけではありません。
パスカルという哲学者・神学者・科学者は 「パンセ」 という著作の中に 「人間の心の中には神様が造った大きな空洞がある」 と言っていました。言い換えれば 「人間の心の中に神様が造った大きなスペースがあります。」 「人間の心の中に空いているスペースがあります。」
人間は皆自分の心の中に空いているスペースに色々な物で埋めようとしています。ある人は「地位」で埋めようとしています。ある人は「名誉」で埋めようとしています。ある人は「富」で埋めようとしています。ある人は「出会い」で埋めようとしています。ある人は「快楽」で埋めようとしています。ある人は「信仰生活」で埋めようとしています。
しかし、どれをどれだけ埋めようとしても、
どれをどれだけ入れても、ピッタリするものはなく、
益々すきま風が吹き空しさが増すだけです。
パスカルという哲学者は 「その空洞は神様以外の物によっては埋められません。神様の形をした空洞だから」 と言っていました。つまり、わたしたちの心の中にある「空洞」「空いているスペース」は神様の形になっています。ですから、神様以外のものによっては埋められません。
「神様が存在しないかのように生きる人ではなく、わたしたちは神様の存在が不可欠である」とパスカルという哲学者がわたしたち一人ひとりに語ろうとしています。マタイによる福音書6章33節に書かれているとおり 「何よりもまず神の国とその義を求め」、 すなわち、自分のやるべきことをやって、正しく生きるようにすれば、あとは余計な心配をしないで、神様に自分自身を任せるべきです。詩編書127編1節~2節に記されているとおり 「神様ご自身が建てて下さるのではなければ、家を建てる人の労苦は空しい。神様ご自身が守って下さるのでなければ、町を守る人が目覚めているのも空しい。」 つまり、日常生活の中で 「神様の支えが不可欠」です。
今日の福音朗読は 「宝を見つけた人は、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う」 という話です。
その「宝」は何でしょうか。しかも、その「宝」さえあれば、他のものは不要です。ここにいるわたしたちにとってその「宝」は 「神様への信仰」 を大切にすることではないでしょうか。
わたくしは南山高等学・中学校男子部に来てから生徒たちからよく聞かれたのは 「先生は神様を信じますか」 という質問です。この質問に対してわたくしは 「日常生活の中で何も信じないよりも何かを信じた方がいい。先生は神様を信じています。君たちは神様を信じなくていい。ですが、最低限は自分自身を信じろ。自分自身を信じなかったら、誰が君たちのことを信じようか」 といつも生徒たちに返事をしています。
「信じる」とは何かを考えるとき、ベルクソンという哲学者の言葉がいつも思い出されます。
「信じる」とは、
人間が獲得する能力ではなく、
すべての人のなかに既に与えられていて、
あることを契機に開花する、
ある種の本能なのではないでしょうか。
「神様を信じること」は実は誰の心にもすでに植え付けられています。きっかけがあればそれは育つでしょう。ベルクソン哲学者の言葉にもあるように、「あることを契機に開花する」のです。しかし、現実には、残念ながら、そのようなきっかけ、契機がなかなかおこらないのです。
どうしてでしょうか。わたしたちは、もっともっと努力して、宝であり、真珠である「神への信仰」を人々に伝えることがまだまだ足りないのではないでしょうか。わたしたちは、もっともっと努力して、宝であり、真珠である「神への信仰」を人々に伝えるならば、この世にもっともっと喜びと希望があふれることでしょう。
「過去を振り向けば、人生は遥かに短くはかないものです。朝露のようなものです。朝に光り輝いて、昼間の風に吹かれて消えてしまいます。どんなに忙しくても、身近な人々、特に「家族」や「友人」や「大切な人」などに宝であり、真珠である「神への信仰」を伝える時間を増やすことを忘れないで欲しい」と心にとめながらこの一週間の旅路に踏み出していきましょう。